Sweet Lover
服を着替えて髪を整え、キッチンに向かった。

キッチンをあけると、お味噌汁と鮭の良い香りがする。

センスの良いカジュアル服を着て、ギャルソンのような粋なエプロンをしている響哉さんが私を見て微笑んだ。

「もうすぐだから、座ってて」

「何か、手伝いますっ」

「いいから。ね?
 座って待ってて」

二度も言われたら、引き下がるほか無い。
私はテーブルについて、なんとなくそこに置いてある新聞に目をやった。

あまり大きなニュースはなかったみたい。

中を開けば下側に雑誌の広告が出ている。

人気俳優ついに結婚――
あのハリウッド俳優、極秘で日本へ――
有名歌手がついに語る、離婚の理由――

そんな見出しが続いている。

くだらないな、なんて思って別の記事に目をやった。

「マーサ、これ運んでもらっていい?」

「はぁいっ」

響哉さんの呼びかけに新聞を閉じる。

特に印象的なことなど何も無い、よくある日常の一シーン。
だから、私は気づかなかった。
その中に、響哉さんに関する重要な情報が入っていたということを――。
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