Sweet Lover
「×◇○※△●!」

がしゃがしゃと、力の限り手首を動かしていると、不意に、理解できない言語が耳に飛び込んできた。

「What?」

私は、思わず英語で問い返す。

「騒ぐと、手首が擦り切れる」

男性のものだと思われる低目の声が、乱暴にそう言った。

「手首ぐらい擦り切れたって構わないわよっ。
 アンタ、誰よ。
 いきなり人のこと攫って、どうするつもり?
 何が目的なの?」

私は考える前に、ヒステリックにそう、叫んでいた。

「目的?
 知らない」

ぶっきらぼうな単語が返ってくるだけだ。

彼は、誰かの命令を受けて動いているだけの駒ってこと――?

犯人は、スドキョーの熱烈なファン?
それとも、須藤家の次期当主の妻の座を狙っている人の差し金?

いろんなことが一気に頭の中を駆け巡って、さらに頭痛が酷くなる。
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