Sweet Lover
その上、手首からも痛みを感じ始めていた。

手錠に擦れてしまったのかもしれない。

――どうしたらいいの。

無駄に体力を使っても意味が無いどころか、傷を作るだけだとことに気づいた私は、ようやく動きを止めた。

荒くなっていた呼吸が、少しずつ落ち着いてくる。

どうしたらいいの――。
響哉さんっ。

頭の中に浮かんでくるのは、響哉さんの甘い笑顔ばかり。

でも――。

ここから、抜け出さなければもう二度と彼に逢えなくなっちゃう。

落ち着かなきゃ……。

目が塞がれていて、手も動かせない。


そんな私に出来ることって、何かしら――。

私は幾度も深呼吸を繰り返す。
考えをまとめるために。
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