Sweet Lover
響哉さんが作ってくれた朝食は、「憧れの日本の朝ごはん」を具現化したようなものだった。

白ご飯、豆腐の味噌汁、鮭、ほうれん草のおひたし、温泉卵、そしてデザートに苺。

……あれ?

美味しいご飯を頬張りながら、私は首を捻る。

だって、私がここに泊まるって決めたのは昨夜のことだし、帰り道響哉さんがスーパーに寄るところなんて見なかったってことは、元々用意していたってこと、だよね?


「マーサ、どうかした?」

固まっている私を見咎めた響哉さんが、心配そうに聞いてくる。

とはいえ、『この食材、本当は誰と食べるつもりだったんですか?』なんて。
……聞くわけにいかないじゃない。
本当に別の誰かと食べる予定があるとしても、真実なんて言ってくれないだろうし――。

「アメリカ帰りなのに、和食も上手なんだなぁって思って」

とっさに思いついたことを口にする。

「ああ、いつもハンバーガーってワケにはいかないからね。
お陰ですっかり自炊が上手くなったよ」


『……本当は、作ってくれる人が居るんじゃないですか?』

そう思ってしまうのは、響哉さんが彼女が居ないなんて思えないほど素敵だから、なんだけど――。
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