Sweet Lover
そうして、ゆっくりと横になったまま自分の姿を確認した。

家を出たときと同じ服。
両手は手錠で繋がれている。
両足も、同様――。

強気で男に喋りかけてみたいけれど、ソイツから溢れる殺意に負けて、口が開けない。

身体が固定されて無いとはいえ、この状態から逃げ切れる自信なんて全くないもの。

――響哉さん、助けて――

胸の中に幾度も浮かぶのは、その言葉ばかり。


けれど。
左手を見て愕然とした。

彼から貰った指輪も、今はこの手についていない。

ひどく、ひどく絶望的な気持ちになる。
それは、私の表情に如実に表れたのだろう。


注意深く私を見守っていたその男が、にやりと笑った。
眩しいほどの白い歯が、零れている。
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