Sweet Lover
「あの、社長。
 失礼ですが、ここでヘッドフォンをあててパソコンの画面を眺めていて、何になるんですか?」

ここは、例の会場の地下。

俺がここに居ることは、そこで不服そうに腕を組んで壁にもたれて時計を見ながら仁王立ちしている春花しか知らないはず。



いや――。

意外な早さでこの部屋に入り、それなりに鮮やかな手並みで【彼女】を救出した男も知ってるか。

彼が俺に連絡をしたからこそ、普段は切ってある回線を特権で繋いで、管理人宿泊室の中をこのパソコンで覗いたのだ。

そうして、彼の推理が間違ってないことを伝え、後はここでその一部始終を見ていることしか出来なかった――。


情けないことに。
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