Sweet Lover
「言ったろ?
 影武者が俺に変わって彼女を救うって。
 その間に俺が仕事していたら、変じゃない。
 須藤 響哉がこの世に二人居ることになる。
 どこぞの遊園地の人気キャラクターだってそんなへましない。
 須藤家の次期当主が、そんな可笑しいこと出来るわけが無いだろう?」

「別に、影武者にしなくても良かったんじゃないんですか?」

至極もっともにも聞こえるその言い分に、俺は思わず笑ってしまう。

真朝が助かってほっとしたせいかもしれない。
もちろん、出来ることなら華奢な彼女の身体を、今すぐこの腕で抱きしめて、幾度もキスをし、言葉の限りを尽くして慰めたい――けれど。

「須藤家」の看板を一度背負ったら最後、それを外すまで俺に自由なんてものはなくなるのだから仕方が無い。


分かっていて、それでも。
一度捨てた看板を背負う以外の選択肢が思いつかなかった。


――この世で一番大切な人を守るために――
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