Sweet Lover
「後10分で俺は消える」

俺にそっくりな【影武者】は真朝を腕に抱えたまま、カメラに向かって口だけ動かしてそう告げた。

それも、何を警戒しているのか、わざわざドイツ語で。

俺はそれを確認してから、パソコンを切る。もちろん、メールでその回線自体をぶち切るように指示することも忘れなかった。


緊張をため息で溶かして体外に吐ききり、自分のモードを「俳優 キョーヤ・スドウ」に無理矢理戻して、春花に目をやった。

「後20分で、自由の身だ。
 それまでに、他の仕事を片付けよう」

有能な秘書、春花は感情の整理はつかないものの、それはそれと割り切ったのか、無表情のままエディターバッグから、必要な書類を取り出し始めていた。
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