Sweet Lover
【花宮 真朝side】

「……響哉……さん、じゃないですよね?」

私は、言葉に出来ない違和感を感じて、腕の中から彼を見上げた。

しぃ、と。
響哉さんにそっくりな男は小さく囁く。

「マーサ、騙し舟って知ってるよね?」

「折り紙の?」

「そう。
 舟の上端を持って目を閉じておくと、相手がばたりと折り紙を折りなおす。
 そのせいで、次に目を開けると舟の横端を持っていたように見えるアレ」

彼は、部屋を出る前に立ち止まって口早にそんな話を始めた。

「……分かる、けど」

唐突な話題に目を丸くする私に、彼はふわりと甘い笑顔を見せる。

「たまにはそうやって、分かっていても尚、騙されるコトだって大事ってこと。
 でないと、折角折り紙を折った人が報われないだろう?」
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