Sweet Lover
「だったら、黙って持ってなさい。
 ――分かった?」

頷かない私の耳元に、形の良い唇を寄せて、彼は囁く。

「でないと、須藤に成り代わってキスまでしなきゃいけなくなる。
 そんなの、嫌だろう?
 真朝ちゃん」

……!!

その喋り方は、佐伯先生のものそのもので。

まさか、髪型を整えて、眼鏡を外せば、それだけで響哉さんになれるって言うの――?

そんなはずはない。
いくらなんでも、二人はそこまでは似ていない。
特殊メイクでも施しているのかしら。

けれども、この至近距離でも真実を見抜くことは出来なかった。

目を丸くしている間に、彼は私を抱えたまま、部屋の外にでた。
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