Sweet Lover
「ちょっと待ってて。
 良い? 誰が来てもここを開けちゃ駄目だよ」

何故か、七匹のこやぎの母親のようなことを言う。

「はぁ……」

きょとんとしている私に
「とびきり素敵な男性が来たときだけは、開けていいからね」
と、言い残し彼は車から降りていった。

ものの5分もしないうちに、どこからどう見ても「佐伯先生」がやってきた。

これは、開けるべきなのかしら。
それとも――。

もちろん、佐伯先生は私の困惑などお構い無しに運転席を開けて車に乗り込んできた。

「須藤響哉は君を助けた後、すぐに仕事に戻った。
 だから、その後は俺が引き継いだってわけ。
 ――大変だったね、真朝ちゃん」

手短かつ強引にそんな筋書きを押し付けられても、私はどうすれば良いのか分からない。
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