Sweet Lover
「逢いたいの。
 本物の響哉さんにっ」

私はこみ上げる感情を押し殺し、声を潜めたまま、先生に囁く。

「出来るだけ早く逢える様にスケジュールを組みなおさせるから、ね」

先生は困ったように私の頭を撫でた。

そうして、ようやく顔を離す。

「啓二くんのところに連絡してたんだろう?
 貧血で倒れて介抱しているって、響哉が伝えているから――。とりあえず、気がついたって電話してもらえる?」


私は、目の前が真っ暗になった気がした。

そうよ。私、お父さんのところに行こうと思っていたのに。
パパの写真が見たくて――。


そんなの、いつの間にか、すっかり忘れていて、今の今まで響哉さんのことしか頭になかったわ。
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