Sweet Lover
くすり、と、葛城が笑う。

「佐伯先輩らしくない、ですね」

俺は、苦笑を浮かべた。

「――だろ?」

いちいち言葉にしなくても、自覚してるよ、そんなの。

「葛城も巻き込まれないように気をつけろよ」

投げやりに言葉を繋ぐ。

「私は巻き込まれたくてここにいるんです。
 須藤先輩のワガママになら、とことん付き合う覚悟ですよ、最初から」

「――そう」

ああ、本当。
面倒くさい。

響哉の周りはこんなヤツばっかりで――。

本当。
あんな自己中なヤツに、どうしてこんなに愛されるのかと、呆れてしまうほどだ。

――まさか、俺も――?

いやいや、と。
心に浮かんだ雑念を、無理矢理かき消して電話を切った。


とはいえ、ああいうヤツだからこそ、あの異常で重たい『須藤家の掟』を破っていながら、未だに「次期当主」で居続けるんだろうな――。
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