Sweet Lover
【須藤 響哉side】

仕上がり状態を全て確認して、修正が必要な部分を洗い出して、責任者に伝えた。

「お疲れ様でした」

車に乗り込んで瞳を閉じると、春花の声が耳に入ってきた。

「――どうして、過去形?」

瞳も開けずにそう聞いた。

今から、遅い夕食をとりながら、ヘアスタイルやメイク、衣装の打ち合わせのはず。

「社長、続きは私一人に任せませんか?」

珍しい発言に、俺は苦笑を漏らす。俺が関わらずとも出来ることなら、最初からスケジュールなんて組んでないだろうに。

「それは無理だ。
 いくらなんでも、当日の自分の姿を他人任せには出来ない」

「でも――」

「いいから早く車を出せ」


早く――。
予定通りに仕事が全て片付いたら、時刻は23時頃だろうか。

そうしたら、彼女の寝顔を見に行こう。


そう決めていた俺は、短い眠りに落ちた。
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