Sweet Lover
「先に入ってて」

先生に日本語で囁かれ、私はスタッフの控え室へと足を進めた。

「Who is she?」(彼女は?)

背中越しに声が聞こえる。

「She is my girlfriend.」(恋人ですよ)

しれっと言われても、困るんですけど。

――戻るべき?

一瞬躊躇するけれど、気づかないフリを装って、そのまま控え室の扉を開けた。

「こんにちは」

「あら、真朝ちゃんいらっしゃい」

笑顔で出迎えてくれたのは、春花さん。

「……ここに居ていいんですか?」

てっきりステージの方に居ると思っていたので、私は目を丸くした。

「いいのよ。
 今日はプロの司会者も雇ったし。ステージには専門家にお任せして、私は事務仕事に徹するの。握手会までにはまだ時間があるし、それまでは主に映画の上映会だから。
 モニターあるから、ここで見る?」

手帳を見ながら、春花さんは一気にそう伝えてくれた。
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