Sweet Lover
「だって、僕は、折角だから須藤さんにアカデミー賞を獲って欲しくて。
 そんなときに、リチャードソン監督がキョーヤ・スドーの出演を望んでいるのに、なかなか事務所側との交渉が進まないと悩んでいる情報を手に入れて――。
 これこそ、僕の仕事だと思ったんだ」

「――だから、暴力的な方法で彼女に接触を?」

ふん、と。
呆れたように先生が言う。

ぐしゃりと、雨に濡れた野良犬のようにオダは項垂(うなだ)れる。

「どれほど調べたって、彼の弱点なんて全然見つからなくて――。
 唯一、アキレス腱になりそうな娘さんに接触しようにも、完璧に守られていて隙が無い。
 そんなときに、あの駐車場で抱き合っている二人を見て、これだって思った。
 彼女を手に入れれば、須藤さんだって、きっと、僕に会ってくれる」


そうでしょう、ねぇ? と。
オダは瞳をぎらつかせた。
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