夏に咲く桜 海に広がる静空
歩く歩調はゆっくりだけど、どこか力強くて頼もしくさえ思えた。



どこに連れて行かれるのか分からなくても、不思議と不安な気持ちは生まれてこなかった。

それは一歩一歩踏みしめるたびに、触れたかった二つのものが濃くなっていくのが感じられるからだろう。

更には彼の手の温もりが、久し振りに人の温もりを感じさせてくれたというのもある。

どちらにせよ、彼は今まで私を見てきた人たちとは明らかに違っていた。


「ここに座って」


どうやら目的の場所に着いたらしく、彼は私をゆっくりと座らせてくれた。

そして、彼も私の横に座ったようだった。


「何年生?」


「中学三年」


「そっか、俺も中三だ」


傍から見れば何気ない会話も、私にとっては新鮮だった。
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