夏に咲く桜 海に広がる静空
考えてみれば私の夢を打ち明けたのは、出会ったばかりの彼が初めてだった。

両親にすら話したことがなかったこの夢を、出会ってまだ三十分くらいしか経っていない彼にだ。



もう二度と会わないかもしれない・・・



いや、先ほどまでは二度と会わないと断定していたが、それから比べればかなり心を許したことになるだろう。


「夏休みが明けたら、この目を手術するの。

医者も両親も『大丈夫』って私の前では言っているけど、聞いちゃったの」


涙が零れ落ちていくのが分かる。

目は見えなくても、涙が流れるものかと今まで何度思ったことだろう。


「夏に桜が咲く、成功するのはそれくらい奇跡に近い確率だって」


三角座りしている太股の前に顔を埋め、必死で涙を隠す。


(そうか、私は治らないんだ)


自分でその言葉を口にして、改めて手術の成功率の低さを突きつけられた。
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