砂の鎖
拓真はママの友人だった。

それがいつから恋人に変わったのかは知らない。

けれど随分と歳が離れていて、18歳で私を産んだママより10歳年下で、私より8歳年上。
つまり、ママより私との方が歳が近かった。

初めはなんて無神経なことをするんだと二人に対して憤った。
確かに、ママの友人として幼い頃から顔見知りではあったけれど、それにしたって若い娘がいるのに娘と歳の近い男を連れ込むなんて、と。


けれどすぐにそんな心配は無用なものだと分かった。

拓真は私が思っていた以上ママにベタ惚れだったからだ。


ママが死んだ時、未成年の私は当然、施設に行くことになるのだろうと思っていた。

ママは、親戚がいなかった。私には父親はいなかった。

若い頃に家出をし両親と絶縁したママ。
親戚付き合いはもちろん皆無。
それどころか親戚がどこにいるのか、そもそもいるのかどうかも私は知らない。
父親はどこのだれか分からないという体たらくだ。

そして転がり込んできたばかりの拓真はママの若い恋人で、あの頃まだ23歳だった筈。
ママが死んだあと、当然拓真は出ていくものだと思っていた。

それなのに、私たちは今も一緒に暮らしている。


ママが死んでから三年。

私たちは今も、ぎこちないながらも二人きりで“家族ごっこ”を続けている。
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