砂の鎖
***
「亜澄!」


うっすら上気した頬で校門をくぐれば爽やかな声が校庭から響いてきた。
軽やかに駆けてくるクラスメイトがすぐに目に入る。
その姿も笑顔も無駄に爽やかで、眩しくて。私は思わず目を細めた。


「真人。おはよ。朝練?」

「おう。朝から今日絶好調!」


真人は白い歯を見せて嬉しそうに笑った。

その笑顔は、見てる方まで嬉しくさせる力がある。
真人は、暗いところなんて何一つない、太陽みたいな人だ。


底辺に近い成績のこの高校は周りのから馬鹿にもされているけれど、真人が所属する陸上部は別格だった。

この学校は公立高校にも関わらず運動部が盛んで、その中でも陸上部は全国大会上位を狙える選手をコンスタントに輩出している。

私には個人競技、特に陸上なんて、個人の才能によるところの様なきがするけれど、運動部の彼らにとっては指導者と方針の違いらしい。


「亜澄。今日の昼、屋上で食べよ?」

「まーさーとー!」


私がぼんやりその眩しさに圧倒されていると、真人の声と校庭から叫ぶ女子生徒の声が同時に聞えた。
明るい髪をアップにしている少したれ目の女の子だ。
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