砂の鎖
「ってかさ、真人は一体いつまで付き合うつもりなの?」


今度聞こえてきた声は、それまでとは違う高い声だった。
甘い声色の中に少し、真人をなじるような響きを感じられた。


(この声……)


私の脳裏に浮かんだ女子生徒。
あの、柔らかそうなミルクベージュの様な髪をしたふわふわした女の子。
真人を呼ぶ、女子マネージャーの声だ。

甘えるように親しげに真人を呼び、私にいつも睨むような視線をくれる彼女。


真人が変なことを言ったら素知らぬ顔で扉を開けてやろうと思っていた私もその声に躊躇した。
私が出て行ったら、彼女は不機嫌になるだろう。


「罰ゲームで須藤さんに告白なんてさせられてさ。やめられないの?」


そのためらいは正しかったのか、それとも間違っていたのか……
次に聞こえてきた言葉は静かに、けれど確かに心臓に突き刺さりじわりと熱い痛みが広がった。
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