砂の鎖
***


「須藤。なんとか言ったらどうだ」


生活指導室に連れていかれたのは私と女子マネージャーの二人だけだった。


「横井。お前も、なんでこんな事になったのかわからないのか?」

「……教室に入ってきた須藤さんに、突然叩かれました……」


彼女の名前は横井というらしい。
私はその時初めて知った。

私は、担任に着いて大人しくここまで来たものの、その後一言も口を開かなかった。
彼女も同様だ。

先ほどまでだんまりで、涙をためて左の頬に手をあて俯いていた。
けれど私がいつまで経っても経緯を話す気が無いと分かると震える声でそう言った。

頬は、右頬よりもチークを入れたかのように僅かに赤いだけだ。
平手ではなく、拳で殴ってやれば良かったと思った。

横井を睨み溜息を吐けば、彼女はびくりと肩を震わせて怯えるように私を見る。


「おい、須藤!」


そんな私に担任の教師は声を荒げた。


生活指導室には、私の担任である熱血若い男性教諭である田中と学年主任でもある数学の佐伯、横井という女子マネージャーと私の四人だけだった。
私と横井は並んで座らされ、教師二人と向かい合っていた。

田中は顔を赤くしていて、佐伯先生はいつも通りの不機嫌な表情、横井は俯き気味に今にも泣きそうな顔だ。
私はと言えば、不機嫌に一人そっぽを向いていた。
< 61 / 186 >

この作品をシェア

pagetop