砂の鎖
横井は少し不機嫌な顔になり、ああ、この女のさっきまでの今にも泣きそうな顔はやっぱり演技だったのか、と。私はやけにあっさりと納得をした。


「……でも、私が須藤さんに殴られたのは事実です……」

「そうか。横井に心当たりはないのか?」

「佐伯先生は、殴られた私が悪いって思ってるんですか!?」

「暴力はどんな時でもふるった方が悪いに決まっている。だが何の理由も無く殴る人間もそうはいないだろう。須藤」

「……はい」


いつの間にか担任に変わり学年主任がこの場を取り仕切っていた。


「どうしてこんなことをした?」

「……」


けれど私は、沈黙を貫いた。
佐伯は、私の境遇を同情しているのだろうか。


「横井を殴ったのは本当だな?」

「……本当です」


私がそれには答えれば、佐伯は深く溜息を吐いた。
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