砂の鎖
それからも私はその問題に向き合い続けた。

適当な数字を入れて、どこかに法則を見つければ命題を否定できるはずだとまた考え適当な法則をたててみるけれどそんなものが証明できるはずもない。


結局私はいくつもの数字を適当に当てはめ何度も乗数の計算をし続けてそれらを睨み続けていた。

確かにいくつ当てはめてみても、『Xⁿ+Yⁿ= Zⁿ』に当てはまる３以上の数字は見つからない。

段々とできることが無くなってきて、私は教科書をぱらぱらとめくりだした。
どこかにヒントや類題が乗っているのではないかと期待をしながら。

ふと、真人なら解けるのだろうかと思った。
真人は校内では不動の一位だ。
しかも真人の一番の得意科目は数学だ。
メールをしてみようと思い付きいつも携帯電話を探そうとして気が付いた。


謹慎中は保護者に携帯電話を預けるようにと言われていた。
バカ正直に拓真は私から携帯電話を取り上げて返してはくれない。

拓真に携帯電話を預けることは不便さ以上の抵抗を感じた。
スマホはものすごい、プライベート宝庫だ。

麻紀としたバカみたいなメッセージのやり取りも残っているし、夕食のレシピが分からなくて調べたブックマークも残っている。

真人とやり取りしたメールも全て残っている。


けれどセキュリティーをかけているから、拓真には中身は見れない筈だ。

四桁の数字の組み合わせは0000から9999までの一万通り。
その数字に私の秘密を託して拓真に携帯電話を渡した。

拓真には、私が設定したセキュリティーの数字は分からないだろう。

けれど、携帯電話を探そうとして気が付いたのはそんな事では無かった。


そんな事では無く、あの日真人が言われていた事柄についてだ。

あの日、真人が否定しなかった言葉について……
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