LOVE SICK
今日は、斎木さんの結婚式だ。
そろそろ披露宴が始まる時間だろう。
私を除く営業課全員と重役を含む一部の社員が出席予定だ。

二次会へは支店の社員が殆ど行くらしい。


私は日取りが知らされた三ヶ月も前から必死になって今日の為に土曜日の商談予定を入れ続けた。
立場上、斎木さんに引き抜かれた私が出席を断るなんて、していい訳が無かった。

けれど仕事でなら、その成果が悔しいけれど斎木さんへのお祝いの気持ちと周りには映るから……
悔しいけれど、私の社内の立場は直属の上司ではなくなった今でも、斎木さんの部下で“お気に入り”なのだ。
仕事が理由なら、周りに不信に思われる事も無い。

期末にだってこんなに必死になんてならないってくらい頑張った。


お蔭で今月の私の営業成績は上々で、忙しさも上々で。
……斎木さんの機嫌も上々で。
私の成績がいいと斎木さんの機嫌が良くなるのは前からだったな、なんて。
変な感傷にも囚われた。

以前から、私の業績は、直属の上司であった斎木さんの成果に直結していた。彼の機嫌が良くなるのは当然だった。
私はそんな彼の気を引くためにも成績を上げようとしていた。……本当に馬鹿な女だと自分でも思う。

今はもう、私は斎木さんの直属ではない。
だからここ最近の機嫌がいい理由は私の所為では無くて、人生の節目を迎える日が近付いていたからだろう。

さすがのあの人だって、大勢の人に祝われて最愛の人と一緒になるその日はきっと楽しみなんだろう。


そんな場所に、同時進行していた元カノが来るなんて……
それこそホラーだ。
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