LOVE SICK
***


「……お疲れ様でした」


私が憔悴しきってそう斎木さんに告げたのはまだ6時前。
とても珍しく、定時。


不機嫌なスタッフの女の子には手を焼いたけれど、なんとかなった。
時間は早くてもこんな一日の疲労感は半端ない。


本当はまだ仕事はあるけれどこんな日は早目に退社して気持ちを切り替えないと。
その方が明日からの仕事だって絶対に捗る筈だ。

明日できる事は明日やろう。

今日できる事は今日のうちに……なんて昔習った覚えもあるけれど、そんな事を言っていたら毎日日付前に家に辿り着くのは不可能だ。

様子を見てメリハリをつけて。
やらないと決めた事はやらない。

こんな諦めだって覚えた仕事のスキルの一つかもしれない。


そんな風に自分に言い訳をしながら業務日報を提出した。


それに、今日の私には帰らなけらばいけない理由がある。


「早いな。川井。デート?」


日報を受け取りながら何とも言えない渋い顔で紙切れを眺める男を睨みつけた。

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