LOVE SICK
本当は、私の直接の上司はこの人じゃない。

一応は、営業のチーフがいる。けれどチーフ不在の際はつい先日迄その立場だった支店長に報告するのが暗黙のルールだ。

正式では無いけれど営業上がりの支店長は営業のトップという側面もあったりする。


更に余談ではあるけれど、その営業チーフはこの春本社から来ていて……
新米支店長のお目付役だったりもする。

つまり、現支店長は部下であるチーフの意向で来年の降格又は左遷があり得る訳だ。


そんな感じでこの支店では支店長派かチーフ派か……みたいな話もあったりする。


因みに私は入社以来ずっと斎木さん直属の部下だから、本意だろうと不本意だろうと支店長派になるらしい。

お世話になった人ではあるけれど斎木さんが目の前から居なくなっても一向に構わない。
寧ろすっきりするんじゃないかと思っている程に薄情者なのにも関わらず。

そんな一支店内の地味な派閥争いに『男性社会は大変だ』という、呑気な感想しか持ち合わせていない。



「予定があるので帰ります」

「ふーん?お疲れ」


不服そうで何か言いたげな斎木さんの視線も、まだ外回りから帰らない同僚達も無視をして会社を出た。


つまらない社内営業よりも今日は大事な事がある。

気になって仕方がない事がある。


自分から言い出したんだから、守らないと……
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