LOVE SICK
***
通い慣れたカフェは夕方になると装いを変えていた。


(よく考えれば、この時間は初めてだ……)


いつもの全体を照らす白い照明は明るさを抑えられて、その代わりにインテリアだと思い込んでいたスタンドライトと足元の間接照明が要所要所にオレンジ色の温かい明かりを落とす。

ダイニングカフェを狙ってるんだろうか。夜はカフードメニューも充実していて軽い夕食もここで済ませられそうだ。
朝にしか来た事が無かったから知らなかった。


(覚えとこ)


普段は遅くまで会社にいるから外食なんてめったにしないけれど、休みの日や外周りから会社に帰る時に寄ってもいいかもしれない。

そう思いながら、それでもカウンターではいつも通りにカフェオレを注文した。
いつも私はブレンドコーヒーかカフェオレのどちらかだ。


朝はバイトの女の子は大体いつも同じだけれど、今回は知らない男の子だ。

高校生くらいだろうか。

昼と夜ではシフトが違うのだろう。初めて見た彼はとても手馴れた手付きだから、新人では無さそうだった。


行きつけの慣れたお店が全然違う場所の様で……少しだけ落ち着かない。


少しでもいつも通りに、と思いながらカウンターで灰皿を取って。
そうして一番入り口に近い席に荷物を置く。
一瞬だけ迷って、いつも座る一人掛け用のカウンターじゃなくて、テーブル席にした。
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