LOVE SICK
俺は斎木さんを尊敬していた。

俺は川井さんを信頼していた。


二人との関係はそれぞれに良好で、キツイ仕事も人間関係に恵まれていたから楽しかった。

斎木さんは俺たちが遣り甲斐を持って仕事ができる環境を整えようとしてくれていたし、営業の給与に歩合を多く取り入れる様になったのは斎木さんが営業チーフになってからだ。

ふと零れる社員からの愚痴や文句をすぐさま拾い上げ、斎木さんは引継や事務作業の無駄を徹底的に省いていった。

元々やる気があった営業はとにかく数を上げることだけに集中できて業績は面白いほどに伸びた。
逆に言えば言い訳を無くされて文句を言っていただけで偉そうな一部の古株は居場所を失い、営業課は仕事ができる社員とできない社員とが色分けされ始めた。

すると中間色の社員たちは役立たず側に分類されたくないと必死になるわけだ。


そうして斎木さんが営業チーフになってからというもの支店全体の業績は右肩上がりによくなっていった。


俺と川井さんは当然、彼の改革の急先鋒として働いたわけで、斎木さんに直接言えない文句や軽い嫌がらせを受けることも初めの頃は多少はあった。
けれど二人で愚痴を言い合い、いい加減な先輩の鼻を明かしてやろうとほくそ笑みながら仕事をするのは割と楽しかったりもした。
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