LOVE SICK
何時間待つ事になるか分からない。
そう思ってカバンから文庫を取り出した。

文庫は今、ここにくる前に買って来た。

本当は仕事をしようかとも思ったけれど、今日は苛々したし、そんな気分でも無い。
偶にはなんの関係の無い本でも読んでゆっくりしようと思いながら1ページ目を開く。

仕事を始めてからというもの、余裕が無くなってしまっていつの間にか日課だった読書を辞めていた。


久しぶりに眺めるその活字は流れるように鮮やかで……
本当に、流れるように……


(全く頭に入ってこないんだけど!)


久しぶりすぎるせいなのかなんなのか。
追いかけるだけで目が滑ってしまい、その文章の意味を上手に掬い取れない。


一度本を閉じてカフェオレを喉に流し込み、それから煙草に火をつけた。


(違う。少し、緊張してるんだ……)


うん。そうだ。


何て謝ればいいだろう。

何を話せばいいだろう。

何を言われるんだろう。


思いの外、私は緊張してるんだ……

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