LOVE SICK
斎木さんと川井さんが男女の関係を終わらせたのは恐らく結婚の報告がある僅か前だ。
川井さんは嫌な事があるとふさぎ込むのではなくがむしゃらになるタイプだからすぐわかった。


それまでと様子が違ったのは、一週間経っても二週間経っても川井さんが立ち直る様子を見せなかったところだ。
睡眠不足で酷い隈を作って空元気で仕事をする彼女は見ている方がつらかった。

俺はその間、斎木さんにさっさとフォローしろよと心の中で文句を言っていただけだ。

そうして一月が過ぎた頃、朝礼で斎木さんの支店長昇任と結婚が報告されたのだった。


斎木さんは結局は、可愛い部下ではなく会社の大手取引先の娘を選んだ。


そう。高田商事の担当者は公にはしていなかったが実は社長令嬢だった。
斎木さんは最後まで斎木さんだったというわけだ。

俺は川井さんは会社を辞めるかもしれないと思った。
もしくは斎木さんとの関係を周囲に暴露するかもしれないとか。
女性は恋愛が絡むと時に感情的で突飛な行動をとりがちだから。

けれど川井さんは傷付いてもいた筈だし、死ぬんじゃないかという程がむしゃらに仕事をしている時期はあったとはいえ、俺が思っていた程めんどくさい事態を引き起こすことは無かった。
< 192 / 233 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop