LOVE SICK
「女ってなんで結婚って単語になんであんな過敏なんだろうな……」

「正直今気楽だし楽しいし……で。結婚ってめんどくさいって気持ちも……」


その瞬間、バンっと机をぶったたく音がして、俺も斎木さんも思わずそちらを見た。


「田嶋くん、さっさと別れれば?」


声の主は川井さん。
立ち上がった彼女は女性スタッフから恐れられる冷たい瞳で俺を見据えている。
久しぶりに見たぞ。この川井さん。


「いや……別れるとまでは……」

「大体さ、結婚が女にメリットってバカじゃないの?」

「えっと……」


それは俺じゃなくて支店長のセリフです。
そんな抗議をこのタイミングでしても火に油な上に支店長まで敵に回しかねない。


「女側からしたら名字変わるし手続き面倒だし、共働きしてたってどうせ家事やらされるんだし。しかも一人面倒見る人が増える分めんどくさいわよ。介護やら子育てやらも全部押し付けられるの目に見えてるんだし、いつ仕事辞めなきゃいけなくなるかなんてわからない。自分が仕事辞めても余裕で養ってくれる程収入ある男がこのご時世にどれくらいいるって言うのよ」

「あの……川井さん……」

「田嶋君は自分がそんな女のデメリットを全部払拭できる程いい男だと思ってんの?」

「……」


怖い……怖いよ川井さん……
思ってないから自信無いんだってば。
男のデリケートな心境もちょっとは推し量ってよ。


「……川井、お前の男って金ないの?」

「いえ。二家族養うくらい余裕みたいですけど!」


どういう意味だよそれ。
二家族? え? もしかして川井さん不倫中?
え~。まためんどくさい男に引っかかってる??
あり得そうで怖いな。


「ホント男って情けない。相手の為とか言って結局考えてるだけでぐずぐずしてるばっかだし……」

「川井さん、……ふ……喧嘩中?」


不倫中とはさすがに聞けないよな。


「してないわよ!」


そう思って言葉を選んだ筈なのに川井さんに思いっきり怒鳴られた。
何なんだよ。じゃあなんでこんな不機嫌なんだよ!
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