LOVE SICK
「で?」


川井さんは一度椅子に座り、クルリと椅子の向きをかえ、デスクに片肘を付いて俺の目をじっと見据えた。


「田嶋君は彼女の結婚アピールに答えるの? 答えないの?」

「まだ……自信が無いんです」


何故か問い詰められる俺は、ぼそぼそと小声で答える。

なんで川井さんに怒られなきゃいけないんだよ……
俺の彼女はこんな事言わないぞ。
年上だけどもっと可愛いんだよ。
川井さんにしなくてホントに良かった。


「ふーん。そんな田嶋くんに人生かけようとしてくれてる彼女なのにね。自信つく頃田嶋君定年なんじゃない? それまで付き合ってくれるといーね」


俺の彼女はこんなハッキリ青筋立てて文句言ってくることなんてないし。
アピールって言ったって控えめに先々について聞かれるくらいで……

……そうなんだよな。年上だけど可愛いんだよな。川井さんと違って。


俺は斎木さんみたいに自分に自信なんてないし。

俺の彼女は川井さんみたいにずけずけ物は言わないし。

大体川井さんだって斎木さんと付き合ってた頃はもう少しおしとやかっていうか。
俺の可愛い彼女ともう少し雰囲気近かったって言うか……


……いつも寂し気で、不安そうだったというか……


「……川井さん……」

「何よ」


怒っている川井さんに、急に不安になった。


俺の彼女はこんな風に怒らないんだ。

それって俺が、彼女を不安にさせてるからなんじゃないか?

俺は誘われたら合コンにも行ってしまうけどそれはあくまでも仕事の付き合いだ。浮気なんてしたことない。
でも、彼女はあの頃の川井さんみたいに不安に思ってるんじゃないか?

川井さんは、斎木さんの気持ちを疑っていた。
だから何も言えなかった。
不安で怖いから何も言えなくて、いつも寂しそうにしていた。


彼女も、俺の気持ちを疑っているんじゃないか?
不安で仕方が無くて、勇気を出して切り出したであろう将来の話を俺は誤魔化している。

他の女の存在を誤魔化し続けた斎木さんとどこが違う?
斎木さんですら結婚を機に川井さんを含む他の女性を全て切ってるじゃないか。(多分)

俺は……
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