LOVE SICK
「……やっぱ俺、プロポーズしようかな……」

「なんて?」


ぼそりと呟いた俺に、川井さんはまだ不審気に冷たくといつめてくるけれど、眉根は少し緩んだ。


自信が無いんだ。
彼女を幸せにする自信がない。

俺が斎木さんくらい仕事ができて自分に自信があれば、俺は迷わないだろう。
彼女が川井さんくらいはっきり物事が言う人であれば、俺は流されるだろう。

でも俺は斎木さんじゃないし、彼女は川井さんじゃない。

それなら俺が自信を持てる日も、彼女がはっきりと俺に結婚を迫る事もきっとない。
俺の彼女は可愛くて控えめで、諦めたら静かに身を引いてしまう、そんな人だ。


「……こんな俺だけど、一生支えてくださいって……」


暫く考えて、口にした言葉に川井さんは少し驚いた様で、目を丸くして押し黙った。

……我ながら情けないとは思うけど、これが一番本音だよな。
幸せにするなんて、とてもじゃないけど俺には言えない。


「ダメ?」


ああ。でも女性は嘘でもかっこいいこと言ってほしいものなのかな……
川井さんにダメ出しされたら考え直そうかな……と思ったけれど。


「川井さん?」


川井さんが俺に対して珍しい表情をしてる。
頬を赤らめて何かに耐える様な……


「ダメじゃないわよ! ああもう! 田嶋くんなのにかっこいい!」


何かよく分からないけど俺のセリフは川井さんにはツボだったらしい。
川井さんのツボってよく分からない……斎木さんみたいな自信がある男に引っ張ってもらいたいんじゃないのか。
斎木さんで懲りたとか?

でも、やっぱ川井さんってちょっと可愛いよな……なんて。
初めて俺の言葉に顔を赤らめて動揺した川井さんにそんな事を思ってしまった。
誰にも言わないけど。
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