LOVE SICK
「斎木さんはどうやって帰るんです?」

「タクシー。お前は?」

「私は大丈夫なので、タクシー停めてきますね」

「大丈夫ってなんだよ」

「いえ……」

「タクシー呼ぶのちょっと待て」

「え?」



店先でそんな会話を交わし、それから五分ほどたったが未だに私と斎木さんは何故か路上にいる。

にぎやかな繁華街から一本入った通りの為、まだ深夜ではないが人通りも車どおりも疎らだ。
タクシーで帰るなら表通りに出た方がいいのに……


「あー……家帰りたくねーな……」

「……何言ってるんですか。新婚でしょ」


ガードレールに腰かけた斎木さんは何故かタクシーを停めるでも無く薄い月を仰いでぼやいている。

煙草に一本火をつけた。
マナー悪いな……
何この人。酔っぱらってるの?

早く帰ってほしいんだけど……


斎木さんは煙を深く吸いこんで、それからゆっくりと吐き出した。

星が無くても明るい夜空に煙が昇る。


……浅い付き合いではないから、その仕草にこの人が本当にちょっと参ってるのが分かるから嫌だ。

せっかちなこの人がこういう煙草の吸い方をするのは苛々を通り過ぎて疲れている時。
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