LOVE SICK
私と祐さんが出会ったのはカフェの喫煙席であり、決して営業と顧客としてではない。
だから問題はない。……と、言い切れる程世の中生ぬるくも無い。

周囲に知られれば少なくとも私は祐さんの会社から担当を外されるだろう。
私は自分の足で信頼と契約を取り付けた、一番大きな取引先を失う。

それだけで済めばいい。
他の顧客企業に知られたら信用問題もある。
懲戒処分になるほどでは無いけれど、別の支店に左遷される可能性は大いにある。

最悪、噂に尾鰭が付き事態が大きくなれば、自主退職を勧められる可能性も無くは無い。


斎木さんが知らなかった事にしてくれるならそれはとてもありがたい話だ。

斎木さんが信用できるのかと言われれば……今までの経験からすれば信用するべきじゃないのかもしれないけど……
けれどこの人だって私に暴露されたら立つ瀬がない過去があるのだから、一方的に嫌がらせをしてくることは多分無いだろう。

取引として成り立つ話。


けれど腹立たしいけど男性と女性では異性問題を起こした時の心象は大きく異なる。
斎木さんの場合は過去の話だし、“若気の至り”“男の甲斐性”で済むかもしれない。
私の方が、不利なのかもしれない。

それでも何となく、この人のこういう部分は信頼していいと思ってる。

私が甘いだけなのかもしれない。

でもこの人は、女を切り捨てることができても部下を見捨てることはきっとしない。
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