LOVE SICK
「男に、そんな瞳でそんな事言うもんじゃ無いよ?」

「何ですかそれは」

「危なっかしいな。君は」


頭の中が少しだけフワフワとしていて言葉の意味は深くは考えられない。
彼の言葉も、自分の言葉も。

それでも途切れない会話は本当に楽しいし。

今日初めてしゃべった人だとは思えない。
落ち着いた彼は居心地がいい。

けれどきっとこれは、今日は少し疲れていたせいだろう。
うん、確かに。今日一日は最悪だった。


けれどお詫びのつもりで飲みに来たのに私の方が酔っ払ってちゃ意味が無い。


「……そろそろ行こうか」


お酒のせいで赤い顔をしてるだろう私にそう言って、伝票を取った彼。
確かに、お店についてから大分時間は経っているし、お腹だって満たされた。
私だって軽くアルコールが頭に回っている状態で。

けど目の前の彼は、まだ涼しい顔だ。
まだ、飲ませたりないのにな……

それに……


「ダメです! 今日はあたしが払うんです!」


それは困る。
今日はお詫びだって言ってるのになんてことをする人だ。


「女の子に払わせられないよ。楽しかったからそれでいいよ」

「イヤです……」


優しく笑う彼に駄々をこねるみたいに反発してしまう。
どうしてだろう。この人に子供扱い、されたくない。

伝票を奪い返そうと立ち上がった私の頭は思ったよりも回ってなくて……
いや、アルコールが思ったより回っていて、が正解。


「きゃ……」

「……危ないな」


力が抜けた足でバランスを崩した私を抱きしめられる様に支えてくれたのは、多分、彼に取っては仕方が無かった事。
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