LOVE SICK
「君は、本当に危なっかしいな……」


そのセリフに、なんだか無償に腹が立った。


「子供じゃありません」


そのままの体勢で顔だけ彼の方に向ければ、毎朝見惚れていたその顔が至近距離にあって……

ずっと触れたいと思っていた柔らかそうな少し癖のある髪の毛が、今までで一番近い所にあって……

その欲求に、アルコールで侵された私の理性が敵う筈も無くて……


思わず、そっと、手を伸ばした……


(あ、そうか……)


飲ませたりないって言うよりも、もう少し……



「……帰りたく、無いです……」


小さく、言葉を零した。
このダークブラウンの綺麗な瞳に見つめられて、嘘なんてつける人はいないと思う。


「子供じゃないなら、男を甘くみるな」


そう言って、近付いた、綺麗な顔に。

そっと目を瞑った……

柔らかい、気持ちがいい、その感触。


(キスも……優しい人なんだ……)


キスよりも、背中に回された腕に、その熱に、妙に男の人を感じた。


「……」


そっと離れた彼の顔を見つめる。
うん。やっぱりすごく、綺麗な顔だ。

この瞳に見つめられる日が来るなんて思いもしていなかった。
瞳を彩る長い睫毛も羨ましくなる程で。
バランス良く配置されたそのパーツは優し気で甘いのに、中性的では無くて男らしい。
それなのに肌は、驚く程綺麗だ。


「今、振りほどかないと、帰せなくなるよ……」

「……」


この体温が、この優しさが、この声が、思考が鈍った今の私には、心地が良すぎる……


人間ってどうしてこんなに意思が弱いんだろう。

違う。

私って、の間違いだ……


けど、暖かい温もりに、優しい瞳に、胸に響くこの声に……

甘えてしまいたいという欲求が間違ってるんだろうか。
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