LOVE SICK
「あれ?ミルクは?」


なんて、不思議そうに聞かれる。


「……美味しそうに飲むから、ブラックも美味しいかと思って……」


そう答えれば今度は嬉しそうに笑った彼に少しだけキュンとしてしまっただなんて……
顔のいい人はこれだからズルい。

コーヒーの趣味を知ってるのは、私だけだと思ってた。

この人は、コーヒーはブラック派だ。
そして私は、時間が無ければフレッシュで済ませるし、時間に余裕がある日はカフェオレだ。

そんな私の嗜好を、彼は知ってるかの様な口ぶり。


「けど私はやっぱりミルク入ってた方が好きみたいです」

「はは。無理するなよ」


楽しそうに笑う彼にやっぱり少しだけムッとする。


「……子供扱いしないで下さい」

「いつしたんだよ」


そう言って、覗き込む様に見つめられればドキリと心臓が跳ねた。

だから、私はこの人の容姿に弱いんだって。
元から目の保養にしてた人なんだって。

そんな人に見つめられて、心臓が焦るのは本能であって、恋とかでは絶対に無い。

この人は、自分が人より優れた容姿で、その優しげな魅力が武器になるって、分かって居るのかもしれない。
そうだとすれば、やっぱりズルい人だ。

耐えきれなくなって目を逸らせば、フっと笑った気配だけがした。

……ズルい。
何かこの人、調子狂う。

仕方なくフレッシュを入れる私にクツクツと楽しげだ。
やっぱり子供扱いされてる気がするし、やっぱり笑い上戸。
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