LOVE SICK
「まだ、俺の事好きなんじゃねえの?」

「……自惚れないで」


軽蔑の視線を投げかける私を少しだけ、真面目な顔で斎木さんは見つめる。
視線を絡め合ったまま少しだけ、無言になる。

目を逸らしたら負ける気がした……

ふっと斎木さんは溜息を漏らしながら視線を落とした。
その弱々しくも見える仕草だって演技に違いない。
そう思えば掌が僅かに汗ばんだ。


「結局さ、お前が一番よかったよ……」

「私は、貴方に振られて本当に良かったと思ってます」

「あんなに可愛い事言ってただろ? たった3ヶ月前じゃん」


けれど結局は、私は彼から目を逸らした。


本当に最悪な男。
そしてそんな男に、夢中になっていた私……

この人は、私の元恋人だ。

この表現が正しいのかは今となっては分からない。


――うちに来いよ


けれどその言葉は、今でも事あるごとに私の脳裏で甘やかに響く。


今になって思えばそれが、私が斎木さんに夢中になったきっかけで。
今の私を作り上げているきっかけとなった言葉でもある。
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