LOVE SICK
『まだ、未熟な私がこの支店長という重要な役職を頂く事になったのは、本当にここの社員を始め、パート、スタッフ、皆さんのお蔭です。これからも至らない事あるかと思いますが……』

『斎木さん! そんな堅い話より彼女との事話して下さいよ!!』

『高田商事の担当者って、あの若い女の子だろ!? 可愛いもんな。どうやって落としたんだよ!』

『本当いつのまにですか? 教えて下さいよ!』


予想外な関係業者との縁談に盛り上がるその場を、私はただ黙って見つめていた。


『彼女のお腹に子供が居て……お恥ずかしながら順番が逆になってしまいましたが……』


嬉しそうに、幸せそうに笑う彼の声と笑顔は昔のモノクロ映画の様に。
私の記憶の中では異常な程強調されている。

別れ話をされた時には出なかった、涙が溢れそうだった。


私は、7年間付き合い続けた地元にいる彼女に最後の最後で負けたんだと思ってた。
後から好きになったのは私。
彼女がいるのを早々に知って、それでも別れたく無かったのは私。

仕方ないって思えた。

幸せを願おうって思えた。


けど、そうじゃなかった。
他にもいたんだ。
そして、その他の子が選ばれた。


頭を殴られた様な衝撃だった。

付き合ってたと。
恋人だと。

思っていたのは私だけだったかもしれない。
< 75 / 233 >

この作品をシェア

pagetop