LOVE SICK
そして今日の私のお客様は、山内さんほどのいい女に『いい男』と言わせる男らしい。
一体どんな人なのだろう。
少し期待というよりも物珍しい気持ちになりつつも接客モードに切り替えて。
“若くて頼りない”と思われないように毅然と、それでも朗らかな笑顔で。
そんな舞台に立つ女優にでもなったつもりで打合せルームに入れば私を待っていた男性が顔を上げた。
その人と視線があったその瞬間、書類がバサリと床に落ちた。
「……何、やってるんだよ……」
「ああ! ごめんなさい!!」
いきなり崩れた私の臨戦態勢に、呆れた先方の声が聞こえてくる。
その綺麗な低い声を聞きながら、私は頬を赤らめつつも慌ててしゃがんで書類をかき集めた。
「初めまして。NOC関東エリアマネージャーの柏原です。担当の鈴木が……昨夜急に食中毒に合ってね……急遽変わりに打合せに来ました」
「あ……あの……?」
「ん?」
小首を傾げて微笑むダークブラウンの瞳。
名刺を差し出しながら事情を話す甘い声。
「……ユウ人材クリエートの、川井です……」
「川井さん? よろしく。顔色悪いけど大丈夫?」
「あ…えっと……」
クツクツと、面白そうに笑うこの人は……
はい。よく知った人です。
初めまして。なんかじゃ、決して無い。
一体どんな人なのだろう。
少し期待というよりも物珍しい気持ちになりつつも接客モードに切り替えて。
“若くて頼りない”と思われないように毅然と、それでも朗らかな笑顔で。
そんな舞台に立つ女優にでもなったつもりで打合せルームに入れば私を待っていた男性が顔を上げた。
その人と視線があったその瞬間、書類がバサリと床に落ちた。
「……何、やってるんだよ……」
「ああ! ごめんなさい!!」
いきなり崩れた私の臨戦態勢に、呆れた先方の声が聞こえてくる。
その綺麗な低い声を聞きながら、私は頬を赤らめつつも慌ててしゃがんで書類をかき集めた。
「初めまして。NOC関東エリアマネージャーの柏原です。担当の鈴木が……昨夜急に食中毒に合ってね……急遽変わりに打合せに来ました」
「あ……あの……?」
「ん?」
小首を傾げて微笑むダークブラウンの瞳。
名刺を差し出しながら事情を話す甘い声。
「……ユウ人材クリエートの、川井です……」
「川井さん? よろしく。顔色悪いけど大丈夫?」
「あ…えっと……」
クツクツと、面白そうに笑うこの人は……
はい。よく知った人です。
初めまして。なんかじゃ、決して無い。