LOVE SICK
あの日から一月……


彼の部屋に定期的にやって来てはこうして食事を共にするのは日課になりつつあった。
休み前は外食をする事もあったけれど祐さんの部屋で彼の手料理を堪能する事が多い。


彼の部屋には、初めて来た時から女物らしき物は見当たらないし。
それどころか増えて行くのは私の物ばかり。
私が物を置いて行っても祐さんは気にもしない。

それどころか、『朝ゆっくり出来るしスーツ持ってくれば?』そんな提案を先にしたのは祐さんの方だ。

本当に他の女性はいないって事なのか、持ち前の気遣いで私がいない時は私の物は綺麗さっぱり片付けてるのかは分からないけど……


けれど多分。

他に定期的にここに来る女性は実際いないような気がしていた。
なんとなく分かるのは女の勘ってヤツだろう。

……私の『女の勘』は時々酷く当てにならない事は実証済みではあるけれど。


「あ。そうだ。るう。映画のチケット貰ったんだけど明日どう?」


お腹も満足して私の機嫌も直ってきた所で祐さんに微笑まれた。
至近距離、すぐ真横で向けられるこれには、正直中々慣れなくて……

遠くからこっそり覗き見るだけで癒されていたその姿を、本や新聞に向けられてるだけで見惚れていたその視線を。
自分に向けられるのは、素面の時は中々大変だ。
心臓が妙に逸るのを我慢しきれない。

お酒でも入っていれば……大胆にもなれるのに……


(この人と居ると早死にしそう……)


一生で心臓が動く回数ってきまってるんじゃなかったっけ?
そうだとしたら、祐さんと一緒にいたら余命は短くなる一方だ。

泡だらけの自分の手に視線を移し、質問とは関係の無い事を考えた。


食事を終えればこうして並んで洗い物をするのがいつものルール。
初めはこんな高級そうに見えるマンションなのに食洗機が付いていない事に大笑いしたし、初めは私が片付けをしようとして、祐さんは自分が、と言い出して、けど私も譲らなくて……

それで揉めていたのはこんな形で決着を見せた。
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