LOVE SICK
「もう……!」


今、自分の顔を鏡では絶対に見たくない。
絶対に、茹でダコみたいに真っ赤になってる。

想像出来るけどしたくない。
分かってるけど認めたくない。

ジタバタと情けない抵抗をすれば祐さんはあっさりと拘束を解いた。
それでもやっぱりその顔は酷く楽し気で。


「やっと泣き止んだ」


それでもそんな事を言われたら、からかわれた事を許さざるを得ないじゃないか……
少し不貞腐れた様に明後日の方を見れば、クツクツと耳を擽る笑い声が心地よくて、掌にだけ残された彼の熱を妙に意識してしまう。

自分の心臓の音だけがやたらと煩くて……

だから本当は今、恥ずかしさよりも罪悪感が大きかったなんて事、忘れてしまうんだ……
幸せそうな恋人達や家族連れに囲まれて、不誠実な関係に甘えている自分に感じる罪悪感。

それは、時々考えてしまう事。

心地良くなればなるほどに……
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