LOVE SICK
「るう……」


けれどそんな私の理性も、いつだって耳に響くこの声に一瞬で淘汰されてしまう。


「……はい」


顔を上げれば祐さんは少し真剣な顔で私を見ていた。
少しだけ驚いて、少しだけ不安になった。

けれどすぐにいつもの優しい色にその表情を変えて。


「いや。夕飯どうする?」


傾き始めたけれどまだ高い太陽に照らされた彼は綺麗だと思った。

少し癖のある柔らかい髪が太陽の光に輝いている。
男の人なのに、私より10歳以上年上なのにとても綺麗な肌。
優しく彫りの深い顔に綺麗に光と影が落ちている。

太陽の光なんてなくても綺麗な人だけど、明るい中で見る彼はより一層綺麗だ。


私が彼にただ見惚れていただけの頃は、太陽の光は届かないカフェの店内で遠くからこっそりと気づかれないように眺めていただけ。

こんな風に太陽の下の彼を眺められる日が来るなんて思いもしなかった。


「まだ、早くないです? それに昨日のトマトソース、まだ残ってるでしょう?」


私もそんな事を言って、微笑む。


その後ちゃっかり、美味しい手料理をねだる言葉を付けるのも忘れずに。
私の手料理を振る舞うのはまだ先でいいでしょう。
悔しいけどあの味は忘れられない。
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