桜吹雪~運命~
「ですが、ご存知の通り、僕は99代目ご当主が引き取った養子。
僕が三神王政の名を引き継ぐことに、不満がある方もいるでしょう。
僕は元々、99代目の剣の師匠の息子。
剣や武術を学んだのは、父が学んだことを知りたかったからです。
ですから僕は、100代目の座など望んでいません。
僕よりも三神王政の名が似合う人は、大勢います。
ですが、遺言書には書き帰ることは許さぬと書かれていました。
そのため僕は、100代目となりました。
でも僕は、ずっと100代目の座を誰かに譲りたいと考えていました。
人なんて、殺したくありません。
人が哀しみ、涙を流すことを、僕は望んでいません。
だから僕は家を抜け出し、遠い村へと逃げました。
その村は、三神家に恨みを抱えた者ばかり住んでいました。
僕はそれを聞き、居ても良いのかと自問自答しました。
しかし、僕の自問自答に答えはすぐに出ました。
村の人たちは優しく、三神村を抜け出す際に負った怪我の心配もしてくれました。
その上、僕には守りたいと思える人が出来ました」
遠矢くんの演説に、あたしは泣いていた。
「僕の些細な幸せは、終わりを告げます。
僕の剣の師匠であり、今は僕の家老として生きる兄上が、僕を見つけ出し、僕はこの村に帰ってきました。
部屋に戻り、僕は気が付いたのです。
人殺しなんて、いけないことだと。
三神家では当たり前のことが、僕がいた村では当たり前ではありません。
誰もが人に優しくし、誰もが人を愛せる村でした。
僕は、三神王政なのだから言います。
我が三神家は、この代で終わりにしたい、と」
一気にざわめき始める広場。
信じられない、と声が上がる。