桜吹雪~運命~
今、目の前ではアノ男の子が眠っている。
あの後、急いでばぁちゃんと紅葉さんを呼び、ばぁちゃんとあたしの家へ男の子を連れて行った。
まぁ…あたしは居候の身だけどね。
倒れて数十分経っているけど、男の子の目が覚める気配はない。
村のお医者さん曰(いわ)く、熱などないため、風邪ではないらしい。
呼吸も穏やかだし、病気ではないだろう。
「しかし、凄い傷だねぇ」
「こりゃ、三神村から来たな」
紅葉さんと梅子さんが話すよう、男の子は腕や足に酷い怪我を負っていた。
切り傷が殆どだけど、特に目立つのは右膝。
血の滲むボロボロの包帯が、痛々しい。
「小町、こやつは1人だったんか?」
「そうだよ、ばぁちゃん」
「なら、逃げようとしたんだろうなァ。
でも、運悪く見つかってしまったんじゃろうな」
「でも、これだけの傷は、不幸中の幸いじゃな。
普通、三神村から抜け出そうとする奴は殺されるのが当たり前。
生きてここまで来れたのが不思議じゃ」
そう言う紅葉さんと、紅葉さんと一緒に逃げてきたばぁちゃんも、あたしにとっては凄いと思うけど…。
逃げたら殺されるが当たり前の三神村から、生きて逃げられたんだもん。