桜吹雪~運命~







「空腹、で倒れまして…」

「空腹…ですか」

「はい…。
かれこれ、1週間は食べていませんから」



…やはり、何か事情がある。

彼は、ワケアリだ。

しかも、その事情は詳しく聞いてはいけない気がする。

あたしは直感した。




「…もし良かったら、これどうぞ。
ばぁちゃんの手作りおにぎりです」




あたしはおにぎりを渡した。

取っておいて良かった。




「…良いんですか?」

「はい。
あたしは食べましたから、遠慮なくどうぞ」

「…ありがとうございます!」




彼は嬉しそうにおにぎりを食べ始める。

…あたしはその姿に、危うく泣きそうになった。




あたしもそうだけど、現代の人は、こんなに美味しそうに食べるだろうか?

だって、現代は“食べること”が普通だから。

お腹が空いたら、冷蔵庫にはいっているオヤツなどを食べられるし、食べたいものがなければコンビニへ行き、好きなモノを買う。

それが当たり前だった。

あたしは好き嫌いが激しいため、特にそう。






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