桜吹雪~運命~






でも、この時代は違う。

“食べること”が普通じゃない。

空腹で倒れる人も、この時代はいる。

今の時代“当たり前”のことが、この時代では“当たり前”じゃない。




「…どうしました?」

「ううん…何でもない」




…だからこんなに、美味しそうに食べるんだ。








「ただいまー」



ばぁちゃんが帰ってきた。

空はもう、茜色に染まっていた。

…綺麗だなぁ。

こんなに綺麗な夕焼け、見たことあるっけ?

…ないよ。

だって普段は、空なんて眺めないもん。




「あ、もしかして家主さんですか?」

「お、気が付いたか。
そうじゃ、わしが野桜梅子じゃ」

「野桜さん、助けていただき、ありがとうございます」

「わしじゃなくて、小町に言え」




そうだ。

あたし、自己紹介していないや。

彼のことも聞いていなかったし。







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