桜吹雪~運命~
「あたし、野桜小町。
よろしくね」
「小町、ですか。
可愛い名前ですね。
あなたに似合いますよ」
そんな言われた方は赤面決定の台詞を、赤面もせず言うなんて。
…天然な紳士は困るなぁ。
「僕は……」
少し考える素振りをしたあと、彼は微笑む。
「ミカミ トオヤです」
「ミカミ…?
もしかしてアンタ、三神村の…?」
三神村と三神家を嫌うばぁちゃんは、ギロリと彼を睨む。
彼は怯えた瞳を見せず、ゆっくり首を振る。
「いえ。
ミカミは“美しい神”と書いて美神です。
トオヤは、“遠い”に弓矢の“矢”で遠矢です」
美神遠矢くんか…。
かっこいい名前だなぁ。
「…ふーん」
漢字が違うことに、ばぁちゃんは納得したようだ。